(義兄×義弟で昏いお話)
それは不思議な家族だった。
優しく有能な父親に、慈愛に満ちた美しい母。面倒見が良く秀才な兄に、見目整った活発な弟。
まるで二次元の世界に存在する理想の家族の姿がそこにはあり、昼は人々の羨望を受けて楽しげな声が家の中には充満していた。
どこを向いても笑顔、笑顔、笑顔。
それは、そう。不気味なほどに、理想で固められた家族の姿のようで―――
「ねえ、政宗。もっと、イイ声出してよ」
「ひっ、あ……ああっ」
闇に覆われた世界。そこは昼間の形相とは姿かたちを異にしている。
虐げられる母と弟に、虐げ笑う父と兄。
昼の間止め処なく流れていた笑い声は、兄と父のものだけが残り、己と母の声はすすり泣くように小さく響く。
いつから、こんなおかしな世界が生まれたのか。もはや政宗にはわからない。
美しい母を娶った父に、玩具を選ぶようにして連れてこられた親無し児が二人―――
それがこの世界を構成する全てで。役割の決められた悲劇のように、毎日、毎日、同じことが繰り返される。
「う、っく、……っ」
早く、早く陽よ昇れ。
この体に絡みつき、内側から己を壊そうとする闇を払って、早く暖かな家庭をこの世に映して。
「……かわいい、まさむね」
壊れたように頬を伝う涙を暖かな兄の舌が掬い取り、宥めるような口付けが瞼に落ちる。
けれど、その優しさは兄が望むから与えられるものであって、自分のために与えられるものではないことも知っていて。
己が望むままに世界を作りたがる父と兄。
毎夜降りてくる闇を恐れながらも、暖かな昼の世界を捨てきれない愚かな母と弟。
それがこの世界を構成する全てで。役割の決められた喜劇のように、また今宵も道化たちが闇を纏って踊り狂う。
「もっと、泣いてよ」
しっかりと閉ざされた重たい布を透かして輝く月を涙で歪んだ世界に移して、政宗は祈るように何度も呟く。
―――早く、早く……陽の光よこの場に射してくれ、と。
それは不思議な家族だった。
優しく有能な父親に、慈愛に満ちた美しい母。面倒見が良く秀才な兄に、見目整った活発な弟。
まるで二次元の世界に存在する理想の家族の姿がそこにはあり、昼は人々の羨望を受けて楽しげな声が家の中には充満していた。
どこを向いても笑顔、笑顔、笑顔。
それは、そう。不気味なほどに、理想で固められた家族の姿のようで―――
「ねえ、政宗。もっと、イイ声出してよ」
「ひっ、あ……ああっ」
闇に覆われた世界。そこは昼間の形相とは姿かたちを異にしている。
虐げられる母と弟に、虐げ笑う父と兄。
昼の間止め処なく流れていた笑い声は、兄と父のものだけが残り、己と母の声はすすり泣くように小さく響く。
いつから、こんなおかしな世界が生まれたのか。もはや政宗にはわからない。
美しい母を娶った父に、玩具を選ぶようにして連れてこられた親無し児が二人―――
それがこの世界を構成する全てで。役割の決められた悲劇のように、毎日、毎日、同じことが繰り返される。
「う、っく、……っ」
早く、早く陽よ昇れ。
この体に絡みつき、内側から己を壊そうとする闇を払って、早く暖かな家庭をこの世に映して。
「……かわいい、まさむね」
壊れたように頬を伝う涙を暖かな兄の舌が掬い取り、宥めるような口付けが瞼に落ちる。
けれど、その優しさは兄が望むから与えられるものであって、自分のために与えられるものではないことも知っていて。
己が望むままに世界を作りたがる父と兄。
毎夜降りてくる闇を恐れながらも、暖かな昼の世界を捨てきれない愚かな母と弟。
それがこの世界を構成する全てで。役割の決められた喜劇のように、また今宵も道化たちが闇を纏って踊り狂う。
「もっと、泣いてよ」
しっかりと閉ざされた重たい布を透かして輝く月を涙で歪んだ世界に移して、政宗は祈るように何度も呟く。
―――早く、早く……陽の光よこの場に射してくれ、と。
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こんなパラレルやってみたい、っていう話題。
パシャリ、と。ごく近くで鳴った音で目が覚めた。
ぼんやりと揺らぐ思考のまま目を開ければ、黒っぽい物体が真っ先に目に入ってくる。それが何なのか、寝ぼけ頭では本当に理解できなくてしばしぼんやりと見つめていたが、もう一度パシャリと何かが落ちるような音がした瞬間に、ぱっと靄がかかったような思考が晴れた。
「―――って、めえ……!」
「おはよ、マサ」
にこり、と黒い物体――カメラをどかして爽やかな笑みを見せつけてきた男は、政宗が何を怒っているのか承知の上ではぐらかす。
「もう準備できてるし、ちゃっちゃと顔洗って朝飯にしましょうよ」
俺ってば腹ペコ、と笑った男が自分の上から退くと同時に背を起こし、男が手にしているカメラへと手を伸ばしたが一瞬遅く、カメラはすでに政宗の手の届かない場所まで逃げている。
「っくしょ、そいつをよこしやがれ!」
「やぁだ。渡したら壊されかねないし……。おまえの凶暴性は俺が一番良く知ってるからさぁ?」
「だったら変な写真ばっか撮ってんじゃねえよ! だいたいてめえは女専門だったはずだろうが!」
「おんやぁ? いつそんな話したっけね。俺は男も撮りますよ?―――というか、マサを撮ったこともあるじゃない」
「御託垂れてんじゃねえよ、このクソッ! いいからフィルム寄越せ!!」
「だから、厭」
-------------------------------------------------------
「いいじゃない。俺しか見ないし、現像も俺ひとりでやってんだよ? 眼で見るか写真で見るかの違いなのに、なぁんでそんなに厭がるかねぇ」
「だったら俺がてめえのこっ恥ずかしい写真撮ったって構わねえってのか」
「や、そいつは勘弁だけどね」
-------------------------------------------------------
「だって、マサがイったときの顔キレイなんだもん。残しとかなきゃ勿体無いじゃん」
「―――っんの、エロ猿!!」
「否定はしないけど。俺、マサに関してはイっちゃってる自覚あるし」
「開きなおんなッ」
「やれやれ……。一体俺様にどうして欲しいのよ、おまえは……」
「とりあえず、今すぐそのフィルムを捨てろ。―――それから一発殴らせろ」
「暴力反対ー」
パシャリ、と。ごく近くで鳴った音で目が覚めた。
ぼんやりと揺らぐ思考のまま目を開ければ、黒っぽい物体が真っ先に目に入ってくる。それが何なのか、寝ぼけ頭では本当に理解できなくてしばしぼんやりと見つめていたが、もう一度パシャリと何かが落ちるような音がした瞬間に、ぱっと靄がかかったような思考が晴れた。
「―――って、めえ……!」
「おはよ、マサ」
にこり、と黒い物体――カメラをどかして爽やかな笑みを見せつけてきた男は、政宗が何を怒っているのか承知の上ではぐらかす。
「もう準備できてるし、ちゃっちゃと顔洗って朝飯にしましょうよ」
俺ってば腹ペコ、と笑った男が自分の上から退くと同時に背を起こし、男が手にしているカメラへと手を伸ばしたが一瞬遅く、カメラはすでに政宗の手の届かない場所まで逃げている。
「っくしょ、そいつをよこしやがれ!」
「やぁだ。渡したら壊されかねないし……。おまえの凶暴性は俺が一番良く知ってるからさぁ?」
「だったら変な写真ばっか撮ってんじゃねえよ! だいたいてめえは女専門だったはずだろうが!」
「おんやぁ? いつそんな話したっけね。俺は男も撮りますよ?―――というか、マサを撮ったこともあるじゃない」
「御託垂れてんじゃねえよ、このクソッ! いいからフィルム寄越せ!!」
「だから、厭」
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「いいじゃない。俺しか見ないし、現像も俺ひとりでやってんだよ? 眼で見るか写真で見るかの違いなのに、なぁんでそんなに厭がるかねぇ」
「だったら俺がてめえのこっ恥ずかしい写真撮ったって構わねえってのか」
「や、そいつは勘弁だけどね」
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「だって、マサがイったときの顔キレイなんだもん。残しとかなきゃ勿体無いじゃん」
「―――っんの、エロ猿!!」
「否定はしないけど。俺、マサに関してはイっちゃってる自覚あるし」
「開きなおんなッ」
「やれやれ……。一体俺様にどうして欲しいのよ、おまえは……」
「とりあえず、今すぐそのフィルムを捨てろ。―――それから一発殴らせろ」
「暴力反対ー」
<サスコジュダテのようなコジュダテ>
「……なにやってんの、あんたら」
瑠璃を探して紅華楼の中を動き回っていた佐助は、ようやく見つけた瑠璃を前にぐったりと頭を垂れて項垂れた。
「なにって……relax(休憩)?」
帰ってくる疑問系の答えも、異国語で何を言っているのか佐助には分からない。けれど、どうせ休んでいるとかそういう意味合いの言葉なのだろう。
脱力した重い頭を持ち上げた佐助は、再び目の前でくつろぐ瑠璃に視線を戻しながら言った。
「つーか、なんでそんな格好してんのよ」
「うっせえ野郎だな。仕事中じゃあねえんだ、どんな格好しようが俺の自由だろ」
「格好っていうか、なんで片倉さんの膝枕で寛いでんのよ」
「―――俺の勝手だ」
そう、よりにもよって瑠璃が居たのは若衆たちに与えられている大部屋の一角。片倉小十郎の膝の上だった。
白い襦袢を纏った瑠璃は、胡坐をかいた小十郎の腿へと頬を寄せ、その体の上には豪奢な紺の打掛がかけられている。
さらに瑠璃は猫が日向でまどろむように、いつもは剣のある眦をほんのりと緩め、その黒髪を優しく梳いている小十郎の指に心地良さげな吐息まで漏らしているのである。佐助でなくとも、何をしているのかと聞きたい状況だろう。
「あいっかわらずのベタ甘だねぇ……」
「羨ましがっても貸さねえぞ。小十郎の膝は俺んもんだ」
「……だれが要りますか、そんな硬い膝」
何を、とばかりに目をむく政宗を、小十郎が宥めるように頭を叩いて往なしている。
「……なにやってんの、あんたら」
瑠璃を探して紅華楼の中を動き回っていた佐助は、ようやく見つけた瑠璃を前にぐったりと頭を垂れて項垂れた。
「なにって……relax(休憩)?」
帰ってくる疑問系の答えも、異国語で何を言っているのか佐助には分からない。けれど、どうせ休んでいるとかそういう意味合いの言葉なのだろう。
脱力した重い頭を持ち上げた佐助は、再び目の前でくつろぐ瑠璃に視線を戻しながら言った。
「つーか、なんでそんな格好してんのよ」
「うっせえ野郎だな。仕事中じゃあねえんだ、どんな格好しようが俺の自由だろ」
「格好っていうか、なんで片倉さんの膝枕で寛いでんのよ」
「―――俺の勝手だ」
そう、よりにもよって瑠璃が居たのは若衆たちに与えられている大部屋の一角。片倉小十郎の膝の上だった。
白い襦袢を纏った瑠璃は、胡坐をかいた小十郎の腿へと頬を寄せ、その体の上には豪奢な紺の打掛がかけられている。
さらに瑠璃は猫が日向でまどろむように、いつもは剣のある眦をほんのりと緩め、その黒髪を優しく梳いている小十郎の指に心地良さげな吐息まで漏らしているのである。佐助でなくとも、何をしているのかと聞きたい状況だろう。
「あいっかわらずのベタ甘だねぇ……」
「羨ましがっても貸さねえぞ。小十郎の膝は俺んもんだ」
「……だれが要りますか、そんな硬い膝」
何を、とばかりに目をむく政宗を、小十郎が宥めるように頭を叩いて往なしている。