(たまには立場も逆転したい)
「てっめ―――葛西!! ふざけたことしてねえで、これ外しやがれ!!」
「い、や、だ。おまえと俺のウエイトの差なんて歴然としてんだから、んなことしたら俺負けるにきまってんじゃん。やーだよ」
「ふっぜけんじゃねえぞ、こら!!」
「おーおー、おまえがそこまで怒んのも珍しいな。これって眼福?」
「くそな台詞ほざいてる暇あんなら、さっさと俺の上から退け!!!」
「たまには俺にも『上』譲れって。いいじゃん、別に。いまどき性感ヘルスに行ってる野郎も多いんだしさあ、ケツでイクくらいどーってことないって」
「ならてめえがケツでイきゃあいいだろ!!」
「だーかーらーさぁ、いつも俺ばっかケツ掘られてんだから、たまにゃ立場交換しようぜって言ってんじゃん。だーいじょうぶだって。いつもおまえにヤられてっから、俺たぶんうまいぜ? しかも、本職のオネエさんにも手取り足取り腰取られて……」
「……おい、まさかてめえ、」
「あ? ああ、昔の話だけどな。まだアッチに居てたときに、知り合いの刑事から摘発したい店があるからって頼まれてさー。やー、役得だったね、あれは」
「……尻軽が」
「うっせ。男の生理現象だっての」
「俺とてめえは違うんだよ!!」
「ハイハイ。だから今からそれを確かめてみようぜ? 俺に弄繰り回されて感じなかったらおまえの勝ち。俺が淫乱の尻軽だってこと認めてやるよ」
「……」
「で。おまえが俺の凄テクでイっちまったら、俺の勝ち。てめえのバックバージンは俺が頂く」
「てんめえ―――」
「この勝負、受けるよな、繁隆? 敵前逃亡は負けを認めるってことだぜ?」
「……ッ!」
「ま、これって感じる奴と感じない奴居るみたいだし? 二分の一の確率に賭ければいいんじゃねえ?」
「孝明、てめえ……ッ」
「んでもって、俺ってばやめる気さらさらないし? まあ、大人しくケツこっちに向けろよ、繁隆」
「―――ぶっころす!!!!」
「てっめ―――葛西!! ふざけたことしてねえで、これ外しやがれ!!」
「い、や、だ。おまえと俺のウエイトの差なんて歴然としてんだから、んなことしたら俺負けるにきまってんじゃん。やーだよ」
「ふっぜけんじゃねえぞ、こら!!」
「おーおー、おまえがそこまで怒んのも珍しいな。これって眼福?」
「くそな台詞ほざいてる暇あんなら、さっさと俺の上から退け!!!」
「たまには俺にも『上』譲れって。いいじゃん、別に。いまどき性感ヘルスに行ってる野郎も多いんだしさあ、ケツでイクくらいどーってことないって」
「ならてめえがケツでイきゃあいいだろ!!」
「だーかーらーさぁ、いつも俺ばっかケツ掘られてんだから、たまにゃ立場交換しようぜって言ってんじゃん。だーいじょうぶだって。いつもおまえにヤられてっから、俺たぶんうまいぜ? しかも、本職のオネエさんにも手取り足取り腰取られて……」
「……おい、まさかてめえ、」
「あ? ああ、昔の話だけどな。まだアッチに居てたときに、知り合いの刑事から摘発したい店があるからって頼まれてさー。やー、役得だったね、あれは」
「……尻軽が」
「うっせ。男の生理現象だっての」
「俺とてめえは違うんだよ!!」
「ハイハイ。だから今からそれを確かめてみようぜ? 俺に弄繰り回されて感じなかったらおまえの勝ち。俺が淫乱の尻軽だってこと認めてやるよ」
「……」
「で。おまえが俺の凄テクでイっちまったら、俺の勝ち。てめえのバックバージンは俺が頂く」
「てんめえ―――」
「この勝負、受けるよな、繁隆? 敵前逃亡は負けを認めるってことだぜ?」
「……ッ!」
「ま、これって感じる奴と感じない奴居るみたいだし? 二分の一の確率に賭ければいいんじゃねえ?」
「孝明、てめえ……ッ」
「んでもって、俺ってばやめる気さらさらないし? まあ、大人しくケツこっちに向けろよ、繁隆」
「―――ぶっころす!!!!」
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(下の別verの吸血鬼パロ。今度は佐助が吸血鬼です。流血注意)
ぴしゃ、ぴしゃ。
赤い幕が視界を横切り、暖かな温度を伴って政宗の柔らかい頬へと降り注ぐ。
暖かい。赤い。冷たくなった。
かつて『母』と呼んでいた人が掴み上げられていた男の指からすり抜けて、床へと崩れ落ちてゆく様を眺めながら、政宗はそんなことを思った。
充満する生臭い血の香り。
視界に入るのは重みさえも持っていそうな鬱蒼とした闇色と、陶器のように鈍い光を発する滑らかな白。そしてそこらに色を添える赤、赤、赤―――
政宗は自分の小さな指先を顔の高さまで持ち上げて、そこに小さな傷がついているのを見つけると、痛いなと思った。
ぷっくりと真っ赤な血が浮いて、体温が下がって蒼白くなってしまった丸みを帯びた指から今にも零れ落ちそうになっている自分の血。
目の前に広がっている光景よりも、よほど現実味を帯びた痛覚に、政宗はほっと安堵の息を零してわらった。
「―――変な子だね」
そこに静かな声が割り入って、政宗は虚ろに指先を捉えていた瞳を声のした方へと向けた。
赤くて、黒くて、白い……。
この世界が有する全てを纏った男がそこには佇み、今しがた母の首筋に喰らいついていたのであろう鋭い牙から血を滴らせたままにんまりと口の端を吊り上げている。
「家族が殺されたってのに、泣きもしないわけ?」
嘲るようにして政宗を見下ろす瞳の中に見えた色はなんだろう。
侮蔑? 嫌悪? 好奇?
それとも、憐憫? あるいは、後悔―――?
政宗はそれを己の指先で確かめるように、小さな小さな指を男へと伸ばす。
触れてみれば、男が抱える感情を理解できるような気がした。
この指先で触れてしまわなければ、男が呆気なく砕け散ってしまうような気がした。
「―――……」
政宗の奇妙な行動に眉をひそめた男はしかし、政宗と視線を合わせるようにその長い足を折って床に膝をつく。
ようやく間近に迫った男の顔―――その中でも一際目を引く、赤を滴らせた鋭い牙の表面を、政宗はほんの少し血で汚れた指先で優しく撫でた。
そこにはもう、肉親から齎された暖かさなど残っておらず、ただ冷たい。
政宗に父母弟が殺された痛みは、なかった。
自分を厭い弟だけを溺愛する母に、そんな家族から目を背けてしまった優しすぎる父。
まるでままごとのように―――人形遊びのように、決められた位置に置かれただけの『家族』に政宗が暖かさを求めることは、もう、なかったから。
この美しくも鋭い牙が肉親たちの肌に喰い込んだのだとわかってはいても、恐怖は微塵も感じなかった。ただ、滑らかで心地良い感触にぼんやりと思考を揺らすだけで。
「血、出てるよ」
どのくらいそうして男の牙に触れていただろう。
すでに冷え切ってしまった母の血か、今だ暖かい自分の指先から零れ出ていた血か……。そのどちらとも分からぬものが男の牙から滴り落ちた刹那、政宗のほっそりとした手首は冷たい男の指に捕えられ、夜の冷気に蒼白く染まったままの指先には何か湿ったものが絡み付いた。
それが男の舌だと虚ろな状態だった脳が理解した時には既に遅く、政宗の指はしっかりと男の支配化に引きずり込まれ、子どもらしい柔らかな肌に先程まで自分が触れていた牙の先端がいまにも食い込むかというところだった。
「……っ」
瞬間、鋭い痛みと共に指先から伝って脳へと走り抜けた甘苦しい体感に、政宗はその小さな身を震わせる。
ぴちゃり、ぴちゃり、と。
美しい牙が穿った穴から溢れ出てくる政宗の血を、同じく鮮やかな色彩を放つ舌でゆったりと舐め取っていくその姿―――
政宗はじっとこちらを見つめ続けている男の目を初めて感じる体感で潤む瞳で見つめ返し、はあっと熱の篭った息を吐いて意識を保った。
「……怖がらないんだね、おまえ」
指先を咥えこむ男の口から零れる吐息も、なぜか政宗と同じほど熱い。
その舌も、指先も。どこからも温度など感じないはずなのに、何故……。
「血も、純粋に快楽の味しかしないなんて、まるで俺に喰われたがってるみたいだ」
政宗の柔らかな肉を甘く食み、穿たれた痕から漏れ出る鮮血を舐め啜る。おぞましいはずのその行為に、けれど少しも嫌悪感を抱かない自分が不思議で。政宗は幼く甘い印象を残すその顔をくしゃりと歪めた。
目の前の男に喰われたいのかなんてわからない。
ただ、今まで感じたこともない衝動を与えてくる男が不思議で、指先に触れる冷たい舌が心地良くて、思考がうまく回らないだけだ。
は、は、と次第に荒くなっていく呼吸を無理に押さえ込みながら、政宗は再び指先に触れた男の舌へとかすかにだけれど小さな爪を立てた。
「――――」
刹那、男の琥珀色だった瞳に血塗れた赤が混じりこみ、政宗の思考にもどろどろと熱に溶け出したような赤が混じり始める。
「……良いね、気に入ったよ、おまえ」
男の赤い口から政宗の指が引き抜かれ、そのかわりに政宗の体自身が男の腕に包み込まれた。
「退屈で退屈で、仕方なかったんだ……」
抱き寄せるように片手で頭を抱え込まれ、右の首筋が男の眼前へと曝される。
「少しの間、おまえ……俺の玩具になりなよ」
白く張りのある政宗の首筋に、ひんやりとした湿り気を帯びたものが触れ、その下の脈動を確かめるかのようにぐっと押さえつけられる。
どくどくと、鳴っているのは一体何処だろう。
こめかみか、首筋か、それとも心臓か。―――わからない。もはや全身が、最後の瞬間を前にして跳ねているようにさえ思える大きさで、どくどくと脈動の音が政宗の全身で木霊する。
「ちゃんと、可愛がってあげるからさ」
圧迫する存在が離れたあと、男の声を合図にしたように全身に痛いと感じるほどの熱が走った。
「あ、あ……、」
ぴくん、と先程まで男の口腔で舐られていた指が跳ね、そこから伝うように全身ががたがたと震えだす。
痛い、苦しい、あつい、熱い、とける……溶ける―――!
喉を引っ掻くような叫びを残して、政宗の意識は白濁する。
柔らかな首筋に食い込んだ男の牙から、一握の寂しさを感じ取ったような気がしながら―――……。
ぴしゃ、ぴしゃ。
赤い幕が視界を横切り、暖かな温度を伴って政宗の柔らかい頬へと降り注ぐ。
暖かい。赤い。冷たくなった。
かつて『母』と呼んでいた人が掴み上げられていた男の指からすり抜けて、床へと崩れ落ちてゆく様を眺めながら、政宗はそんなことを思った。
充満する生臭い血の香り。
視界に入るのは重みさえも持っていそうな鬱蒼とした闇色と、陶器のように鈍い光を発する滑らかな白。そしてそこらに色を添える赤、赤、赤―――
政宗は自分の小さな指先を顔の高さまで持ち上げて、そこに小さな傷がついているのを見つけると、痛いなと思った。
ぷっくりと真っ赤な血が浮いて、体温が下がって蒼白くなってしまった丸みを帯びた指から今にも零れ落ちそうになっている自分の血。
目の前に広がっている光景よりも、よほど現実味を帯びた痛覚に、政宗はほっと安堵の息を零してわらった。
「―――変な子だね」
そこに静かな声が割り入って、政宗は虚ろに指先を捉えていた瞳を声のした方へと向けた。
赤くて、黒くて、白い……。
この世界が有する全てを纏った男がそこには佇み、今しがた母の首筋に喰らいついていたのであろう鋭い牙から血を滴らせたままにんまりと口の端を吊り上げている。
「家族が殺されたってのに、泣きもしないわけ?」
嘲るようにして政宗を見下ろす瞳の中に見えた色はなんだろう。
侮蔑? 嫌悪? 好奇?
それとも、憐憫? あるいは、後悔―――?
政宗はそれを己の指先で確かめるように、小さな小さな指を男へと伸ばす。
触れてみれば、男が抱える感情を理解できるような気がした。
この指先で触れてしまわなければ、男が呆気なく砕け散ってしまうような気がした。
「―――……」
政宗の奇妙な行動に眉をひそめた男はしかし、政宗と視線を合わせるようにその長い足を折って床に膝をつく。
ようやく間近に迫った男の顔―――その中でも一際目を引く、赤を滴らせた鋭い牙の表面を、政宗はほんの少し血で汚れた指先で優しく撫でた。
そこにはもう、肉親から齎された暖かさなど残っておらず、ただ冷たい。
政宗に父母弟が殺された痛みは、なかった。
自分を厭い弟だけを溺愛する母に、そんな家族から目を背けてしまった優しすぎる父。
まるでままごとのように―――人形遊びのように、決められた位置に置かれただけの『家族』に政宗が暖かさを求めることは、もう、なかったから。
この美しくも鋭い牙が肉親たちの肌に喰い込んだのだとわかってはいても、恐怖は微塵も感じなかった。ただ、滑らかで心地良い感触にぼんやりと思考を揺らすだけで。
「血、出てるよ」
どのくらいそうして男の牙に触れていただろう。
すでに冷え切ってしまった母の血か、今だ暖かい自分の指先から零れ出ていた血か……。そのどちらとも分からぬものが男の牙から滴り落ちた刹那、政宗のほっそりとした手首は冷たい男の指に捕えられ、夜の冷気に蒼白く染まったままの指先には何か湿ったものが絡み付いた。
それが男の舌だと虚ろな状態だった脳が理解した時には既に遅く、政宗の指はしっかりと男の支配化に引きずり込まれ、子どもらしい柔らかな肌に先程まで自分が触れていた牙の先端がいまにも食い込むかというところだった。
「……っ」
瞬間、鋭い痛みと共に指先から伝って脳へと走り抜けた甘苦しい体感に、政宗はその小さな身を震わせる。
ぴちゃり、ぴちゃり、と。
美しい牙が穿った穴から溢れ出てくる政宗の血を、同じく鮮やかな色彩を放つ舌でゆったりと舐め取っていくその姿―――
政宗はじっとこちらを見つめ続けている男の目を初めて感じる体感で潤む瞳で見つめ返し、はあっと熱の篭った息を吐いて意識を保った。
「……怖がらないんだね、おまえ」
指先を咥えこむ男の口から零れる吐息も、なぜか政宗と同じほど熱い。
その舌も、指先も。どこからも温度など感じないはずなのに、何故……。
「血も、純粋に快楽の味しかしないなんて、まるで俺に喰われたがってるみたいだ」
政宗の柔らかな肉を甘く食み、穿たれた痕から漏れ出る鮮血を舐め啜る。おぞましいはずのその行為に、けれど少しも嫌悪感を抱かない自分が不思議で。政宗は幼く甘い印象を残すその顔をくしゃりと歪めた。
目の前の男に喰われたいのかなんてわからない。
ただ、今まで感じたこともない衝動を与えてくる男が不思議で、指先に触れる冷たい舌が心地良くて、思考がうまく回らないだけだ。
は、は、と次第に荒くなっていく呼吸を無理に押さえ込みながら、政宗は再び指先に触れた男の舌へとかすかにだけれど小さな爪を立てた。
「――――」
刹那、男の琥珀色だった瞳に血塗れた赤が混じりこみ、政宗の思考にもどろどろと熱に溶け出したような赤が混じり始める。
「……良いね、気に入ったよ、おまえ」
男の赤い口から政宗の指が引き抜かれ、そのかわりに政宗の体自身が男の腕に包み込まれた。
「退屈で退屈で、仕方なかったんだ……」
抱き寄せるように片手で頭を抱え込まれ、右の首筋が男の眼前へと曝される。
「少しの間、おまえ……俺の玩具になりなよ」
白く張りのある政宗の首筋に、ひんやりとした湿り気を帯びたものが触れ、その下の脈動を確かめるかのようにぐっと押さえつけられる。
どくどくと、鳴っているのは一体何処だろう。
こめかみか、首筋か、それとも心臓か。―――わからない。もはや全身が、最後の瞬間を前にして跳ねているようにさえ思える大きさで、どくどくと脈動の音が政宗の全身で木霊する。
「ちゃんと、可愛がってあげるからさ」
圧迫する存在が離れたあと、男の声を合図にしたように全身に痛いと感じるほどの熱が走った。
「あ、あ……、」
ぴくん、と先程まで男の口腔で舐られていた指が跳ね、そこから伝うように全身ががたがたと震えだす。
痛い、苦しい、あつい、熱い、とける……溶ける―――!
喉を引っ掻くような叫びを残して、政宗の意識は白濁する。
柔らかな首筋に食い込んだ男の牙から、一握の寂しさを感じ取ったような気がしながら―――……。
甘いあまい臓腑を満たす蜜の味。
そのものが抱える感情が深ければ深いほどまろみを帯びた味がするこの密が、何よりも政宗の飢えを満たしてくれた。
―――ヴァンパイア
吸血鬼、闇の眷属、選ばれた貴種……さまざまな言葉で表現される自分たち血塗られた闇の住人たちが主食としているのは、清らかなる神の子の血―――無垢な人間の生き血だ。
人々がワインを飲み、パンを齧って飢えを凌いでゆくように、政宗たちヴァンパイアは人の生き血で飢えを凌ぐ。人道から外れた穢らわしい行為だといかに世間から罵倒されようが、政宗たちがこの行為をやめることなどないだろう。
飢えよりも、我慢できないことが長い時を生きる彼らにはある。政宗を含めて味わったことがないものなど居ないであろう―――孤独と退屈が、政宗たちを狂気の宴へと誘い込む。
人を喰らい、人に追われ、闇の中で生きてゆく。そうして闇に迷い込んできた無垢な糧を貪り、また光に追われて闇に身を隠す、そんな繰り返し。
滑らかな肌に寄せていた唇を離し、唇についた赤い血をとろりと湿った舌で舐め取った政宗は、覚えのある気配にぴくりと形の良い眉を一度跳ね上げた。
「―――その臭い、ダムピールだな」
「……ご明察、」
くるりと背後を振り返れば、目に映るのは鮮やかな橙色の髪と、ぎらりと光る銀色の刃。
ダムピール―――吸血鬼と人間との間に生まれた混血。一族のはみ出し者であり、自分たちを殺せる能力を宿す厄介でしかない存在。
政宗はそんな情報をつらつらと思い出しながら、他のことを口にした。
「このあたりのシマを仕切ってるのは真田だったか? てめえも、あいつの一味かよ?」
「またまた正解。俺を使役してる主人が真田の旦那でね」
「てめえも物好きな奴だな。あんなのに忠誠を誓ったところで、得することなんざ何もねえだろ」
「そうでもないよ。こうやって、あんたたち吸血鬼に出会えるだけでも真田の旦那についた甲斐はあったってところだよ」
「はっ、俺たちを追っかけまわすのがそんなに楽しいか、真田の犬」
「なんとでも」
言いしな、男の指先から鋭い光が放たれ、政宗の頬を掠りながら背後へと突き抜けてゆく。
それが銀の小刀だと気が付いたのは、頬にぬるついた血が流れたときだ。
「……折角食事したってのに、余分な血を流させんじゃねえよ」
ぼやきながら親指で頬の血を拭い取り口元に運んで舐め取るが、さきほどの小刀が聖水で清められてでもいたのか舐められたものじゃない。
政宗はぺっと貴種にあるまじき下品さで舌の上に広がった不愉快な味を吐き出し、揶揄の光を込めて男を見遣った。
「俺の血は高いぜ、真田の坊や」
「その、真田のボウヤってやめてくんない? 俺が旦那の子どもになったみたいじゃん」
「こいつは失礼。俺はおまえさんの名前を知らないもんでな。ダムピールって呼んでやった方が良かったか?」
そう思っているダムピールなど皆無に等しいと知りながら尋ねる政宗に、男の瞳から殺気が放たれる。
人間から見れば恐ろしい化け物。政宗たち純潔のヴァンパイアからすれば、己らの餌である人間との間に生まれた汚らわしい一門の恥さらし。
どこに所属することも許されない異端者は、己をそんな存在にしたヴァンパイアを恨み、持って生まれた能力を駆使して政宗たちを駆りに遣ってくる。
「さすけ」
「サスケ? 名字は?」
「あんたらに本当の名前を教えるほど、俺は馬鹿じゃないよ」
「ちっ、つまんねえ奴……」
―――ダムピール
それは、血と刺激に飢えた吸血鬼たちにとって、数奇な運命が送り届けてくれる何ものにも変えがたい娯楽という名の存在だった。
そのものが抱える感情が深ければ深いほどまろみを帯びた味がするこの密が、何よりも政宗の飢えを満たしてくれた。
―――ヴァンパイア
吸血鬼、闇の眷属、選ばれた貴種……さまざまな言葉で表現される自分たち血塗られた闇の住人たちが主食としているのは、清らかなる神の子の血―――無垢な人間の生き血だ。
人々がワインを飲み、パンを齧って飢えを凌いでゆくように、政宗たちヴァンパイアは人の生き血で飢えを凌ぐ。人道から外れた穢らわしい行為だといかに世間から罵倒されようが、政宗たちがこの行為をやめることなどないだろう。
飢えよりも、我慢できないことが長い時を生きる彼らにはある。政宗を含めて味わったことがないものなど居ないであろう―――孤独と退屈が、政宗たちを狂気の宴へと誘い込む。
人を喰らい、人に追われ、闇の中で生きてゆく。そうして闇に迷い込んできた無垢な糧を貪り、また光に追われて闇に身を隠す、そんな繰り返し。
滑らかな肌に寄せていた唇を離し、唇についた赤い血をとろりと湿った舌で舐め取った政宗は、覚えのある気配にぴくりと形の良い眉を一度跳ね上げた。
「―――その臭い、ダムピールだな」
「……ご明察、」
くるりと背後を振り返れば、目に映るのは鮮やかな橙色の髪と、ぎらりと光る銀色の刃。
ダムピール―――吸血鬼と人間との間に生まれた混血。一族のはみ出し者であり、自分たちを殺せる能力を宿す厄介でしかない存在。
政宗はそんな情報をつらつらと思い出しながら、他のことを口にした。
「このあたりのシマを仕切ってるのは真田だったか? てめえも、あいつの一味かよ?」
「またまた正解。俺を使役してる主人が真田の旦那でね」
「てめえも物好きな奴だな。あんなのに忠誠を誓ったところで、得することなんざ何もねえだろ」
「そうでもないよ。こうやって、あんたたち吸血鬼に出会えるだけでも真田の旦那についた甲斐はあったってところだよ」
「はっ、俺たちを追っかけまわすのがそんなに楽しいか、真田の犬」
「なんとでも」
言いしな、男の指先から鋭い光が放たれ、政宗の頬を掠りながら背後へと突き抜けてゆく。
それが銀の小刀だと気が付いたのは、頬にぬるついた血が流れたときだ。
「……折角食事したってのに、余分な血を流させんじゃねえよ」
ぼやきながら親指で頬の血を拭い取り口元に運んで舐め取るが、さきほどの小刀が聖水で清められてでもいたのか舐められたものじゃない。
政宗はぺっと貴種にあるまじき下品さで舌の上に広がった不愉快な味を吐き出し、揶揄の光を込めて男を見遣った。
「俺の血は高いぜ、真田の坊や」
「その、真田のボウヤってやめてくんない? 俺が旦那の子どもになったみたいじゃん」
「こいつは失礼。俺はおまえさんの名前を知らないもんでな。ダムピールって呼んでやった方が良かったか?」
そう思っているダムピールなど皆無に等しいと知りながら尋ねる政宗に、男の瞳から殺気が放たれる。
人間から見れば恐ろしい化け物。政宗たち純潔のヴァンパイアからすれば、己らの餌である人間との間に生まれた汚らわしい一門の恥さらし。
どこに所属することも許されない異端者は、己をそんな存在にしたヴァンパイアを恨み、持って生まれた能力を駆使して政宗たちを駆りに遣ってくる。
「さすけ」
「サスケ? 名字は?」
「あんたらに本当の名前を教えるほど、俺は馬鹿じゃないよ」
「ちっ、つまんねえ奴……」
―――ダムピール
それは、血と刺激に飢えた吸血鬼たちにとって、数奇な運命が送り届けてくれる何ものにも変えがたい娯楽という名の存在だった。