(特にCPは気にしていませんが、今のところチカダテ気味)
目に毒なほど真っ白な壁に囲まれた部屋の床は、塵一つなく輝く大理石。はめごろしの大きな採光用の窓からは、燦々と太陽光が入り込んでいた。
緊張感が満ちた部屋に立ち並ぶ黒服の集団の中で、暖かさを感じさせる光はひどく不似合いだ。首を締め付ける青色のネクタイを憎らしく思いながら、東方司令部司令官の地位に座る伊達政宗は小さく重い息を吐く。目ざとくそれを見つけた副官の鋭い視線が背中に注がれたのはわかったが、そんなものを気にする政宗ではない。ただでさえ軍部と対立している織田信長を筆頭にした極左組織との攻防でここのところ満足に寝ていないというのに、意味があるとは思えない定例集会に呼び出されて機嫌は最悪だ。
軍部最高責任者、元帥である武田信玄に逆らうつもりなど毛頭もないが、わざわざ全司令部の責任者を集めて檄を飛ばす必要性などあるのかと。寝不足で混沌としている脳で考えた政宗は、ふと隣から伝わってくる興奮と呼ぶべき熱量に目をやって嘆息する。
政宗の横に立つのは、中央司令部の司令官を負かされている真田幸村だ。司令部ごとにネクタイは色分けされているので、政宗とは違い赤色のネクタイを締めている幸村の瞳は爛々と輝きながら目の前に立つ元帥の姿を映している。
幸村が元帥に傾倒していることは周知の事実だから今更リアクションをしたりはしないが、なるほど。元帥を崇める人間からすれば、月に二度の定例集会も日々の糧になるらしい。―――まあ、幸村の場合は少し意味合いが違う気もするが。
政宗が所属する【日本帝国軍】は全土を大きく九つのエリアに分け、それぞれのエリアに最低一つの司令部を設けて拠点としている天皇公認の組織である。
日本全国民の安全を守るため―――そう銘打って造られた組織であるため、軍の仕事内容は多岐にわたる。まず各地の治安維持に始って、テロ組織などの壊滅、また天皇により定められた法に違反した者たちを取り締まったりもする。
口さがない人間は軍を「日本の便利屋」と皮肉るが、政宗としては大いに同意したいところだ。
何かあるたびに駆り出される軍部は常に忙しく、有給休暇など名前としてあるだけで実際の機能はまったく果たせていない。各司令部ごとに寮が併設されてあり、軍部の人間は例外なくそこに収容されるものだから、休日などあってなきが如しの毎日だ。
もちろん、その分給料は高いが、使う時間がないのだから意味がない。専ら女や酒といった刹那の娯楽へと消えてゆくのが、軍内での正しい金の使い道だ。
「―――よぉ、最近ごぶさたじゃねえか」
幸村とは反対側から掛かった低音に、政宗はますます苦虫を噛み潰したような顔になる。
「忙しい忙しいって、酒も飲めねえほどの忙しさたぁ……いってぇどういうことだよ?」
「Don't touch me,集会中だ。後にしろ」
「つれねえなぁ……、」
言葉とは裏腹に至極愉しそうな声を発しながら、男―――長曾我部元親は身を引く。酒に女と、まさに軍内での娯楽を誰よりも一番愉しんでいるのだろうこの男は、何を気に入ったのだか逢うたびに政宗を揶揄ってくる。副指令の毛利元就が居ればまだ大人しいのだが、今日は鉄面皮とも言えるほど冷たいオーラを発する彼の気配はない。
つまりは、元親を止める人間はどこにも居ないということだ。
「……つれてたまるか、ボケ」
「何か言ったか?」
「もう耳が悪くなってんのか? 耄碌(もうろく)するなよ、ジイさん」
「俺の髪は染めてるんであって、白髪じゃねえって」
「Ha,そいつァ初耳だ」
お決まりの厭味に、お決まりの悪態。視線だけはしっかりと前を向いているが、最早信玄の言葉など耳に入ってはいない。何か重要な伝達があったとしても、それは背後に控える小十郎が一言一句違えることなく記憶しているだろうから心配はいらなかった。
それよりも今は身に降りかかった火の粉を払うのが先だと、政宗は不機嫌な顔を隠しもせずに刺々しい口調で告げる。
「…ったく、んでテメエ一人で来てんだよ。元就はどうした、元就は」
「あいつは司令部に残って書類の山と格闘中だ」
「どうせテメエが造った山だろうが。自分のケツくらい自分で拭けよ」
「どうも自分で始末するのは苦手でねぇ……。まあ、おめえさんの尻なら面倒見てやっても良いがな、」
「―――くたばれ」
ニヤニヤと笑う顔に暴言を吐き捨てながら、政宗は視線だけで周囲を見遣る。
目に毒なほど真っ白な壁に囲まれた部屋の床は、塵一つなく輝く大理石。はめごろしの大きな採光用の窓からは、燦々と太陽光が入り込んでいた。
緊張感が満ちた部屋に立ち並ぶ黒服の集団の中で、暖かさを感じさせる光はひどく不似合いだ。首を締め付ける青色のネクタイを憎らしく思いながら、東方司令部司令官の地位に座る伊達政宗は小さく重い息を吐く。目ざとくそれを見つけた副官の鋭い視線が背中に注がれたのはわかったが、そんなものを気にする政宗ではない。ただでさえ軍部と対立している織田信長を筆頭にした極左組織との攻防でここのところ満足に寝ていないというのに、意味があるとは思えない定例集会に呼び出されて機嫌は最悪だ。
軍部最高責任者、元帥である武田信玄に逆らうつもりなど毛頭もないが、わざわざ全司令部の責任者を集めて檄を飛ばす必要性などあるのかと。寝不足で混沌としている脳で考えた政宗は、ふと隣から伝わってくる興奮と呼ぶべき熱量に目をやって嘆息する。
政宗の横に立つのは、中央司令部の司令官を負かされている真田幸村だ。司令部ごとにネクタイは色分けされているので、政宗とは違い赤色のネクタイを締めている幸村の瞳は爛々と輝きながら目の前に立つ元帥の姿を映している。
幸村が元帥に傾倒していることは周知の事実だから今更リアクションをしたりはしないが、なるほど。元帥を崇める人間からすれば、月に二度の定例集会も日々の糧になるらしい。―――まあ、幸村の場合は少し意味合いが違う気もするが。
政宗が所属する【日本帝国軍】は全土を大きく九つのエリアに分け、それぞれのエリアに最低一つの司令部を設けて拠点としている天皇公認の組織である。
日本全国民の安全を守るため―――そう銘打って造られた組織であるため、軍の仕事内容は多岐にわたる。まず各地の治安維持に始って、テロ組織などの壊滅、また天皇により定められた法に違反した者たちを取り締まったりもする。
口さがない人間は軍を「日本の便利屋」と皮肉るが、政宗としては大いに同意したいところだ。
何かあるたびに駆り出される軍部は常に忙しく、有給休暇など名前としてあるだけで実際の機能はまったく果たせていない。各司令部ごとに寮が併設されてあり、軍部の人間は例外なくそこに収容されるものだから、休日などあってなきが如しの毎日だ。
もちろん、その分給料は高いが、使う時間がないのだから意味がない。専ら女や酒といった刹那の娯楽へと消えてゆくのが、軍内での正しい金の使い道だ。
「―――よぉ、最近ごぶさたじゃねえか」
幸村とは反対側から掛かった低音に、政宗はますます苦虫を噛み潰したような顔になる。
「忙しい忙しいって、酒も飲めねえほどの忙しさたぁ……いってぇどういうことだよ?」
「Don't touch me,集会中だ。後にしろ」
「つれねえなぁ……、」
言葉とは裏腹に至極愉しそうな声を発しながら、男―――長曾我部元親は身を引く。酒に女と、まさに軍内での娯楽を誰よりも一番愉しんでいるのだろうこの男は、何を気に入ったのだか逢うたびに政宗を揶揄ってくる。副指令の毛利元就が居ればまだ大人しいのだが、今日は鉄面皮とも言えるほど冷たいオーラを発する彼の気配はない。
つまりは、元親を止める人間はどこにも居ないということだ。
「……つれてたまるか、ボケ」
「何か言ったか?」
「もう耳が悪くなってんのか? 耄碌(もうろく)するなよ、ジイさん」
「俺の髪は染めてるんであって、白髪じゃねえって」
「Ha,そいつァ初耳だ」
お決まりの厭味に、お決まりの悪態。視線だけはしっかりと前を向いているが、最早信玄の言葉など耳に入ってはいない。何か重要な伝達があったとしても、それは背後に控える小十郎が一言一句違えることなく記憶しているだろうから心配はいらなかった。
それよりも今は身に降りかかった火の粉を払うのが先だと、政宗は不機嫌な顔を隠しもせずに刺々しい口調で告げる。
「…ったく、んでテメエ一人で来てんだよ。元就はどうした、元就は」
「あいつは司令部に残って書類の山と格闘中だ」
「どうせテメエが造った山だろうが。自分のケツくらい自分で拭けよ」
「どうも自分で始末するのは苦手でねぇ……。まあ、おめえさんの尻なら面倒見てやっても良いがな、」
「―――くたばれ」
ニヤニヤと笑う顔に暴言を吐き捨てながら、政宗は視線だけで周囲を見遣る。
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(東郷の復讐劇)
「―――葛西、てめえ……よくもやってくれたな」
「へっ? し、繁隆、おまえなんでこんなとこに居んだよ?!」
「そりゃあ探したからに決まってんだろ、ああ? 俺たちが他人のヤサ見つける専門家だってこと、てめえ忘れてたんじゃねえのか?」
「忘れてねえけど……って、ああ!! おまっ、鍵はどうしたんだよ!? まさか壊したんじゃんじゃねえだろうな!!」
「誰がそんな荒っぽいことするかよ。綺麗に開けてやったんだ、感謝しろよ」
「誰がするか、阿呆!! ってか、靴!! 土足であがんな馬鹿野郎!!」
「んな汚ぇ場所で靴が脱げるか」
「汚……っ仕方ねえだろ! 転勤が多くていちいち高いマンション買ってらんねえんだよ!!」
「それはおまえの事情だろうが。俺が知ったことかよ」
「繁隆ァ、てめえ……!!」
「それより俺の用件だ。てめえ、よくもnizeで俺の名前を出してくれたな……」
「あ、あれは……」
「ドラッグパーティーは愉しかったか? ああ? どうなんだよ、葛西。ラリったガキどもと飲んで、踊って、存分に愉しんできたんだろうなぁ?」
「わっ悪かったとは思ってるって! ただ、あんときはああでもしないと逃げれなかったから……っ」
「ほお? てめえは難を逃れて、俺は会長直々のお呼び出しを喰らったってのに、謝りもしねえのか」
「で、でも無実だってすぐわかっただろ? それに、ちゃんと詫びの印に情報もやったじゃねえかよ!!」
「俺たちの家業は面子が大事なんだっつうことは知ってるよなあ、おまえ」
「あ、ああ……」
「その面子に泥塗られた俺の気持ち、ちゃんとわかってんのかよ、ああ?」
「っから、悪かったって……!」
「聞こえねえな。ちゃんと、しっかり、頭床に擦り付けて謝れよ―――孝明、」
「なっ」
「おまえが良い子で謝りゃ、俺も許してやらねえことはねえぜ? 今回は、少しばかり厄介な仕事を回される程度で済んだからな。俺の気が収まりゃ、それで良いんだよ」
「だ、っからって……!」
「早くあやまれよ、孝明。そうじゃねえと、今すぐ裸にひん剥いて後ろから突っ込むぞ」
「……っ」
「都合の良いことに、手下は連れてきてるしな。いくらてめえが武道の有段者だっつっても、チャカ持った相手を何人も相手にするのは辛ぇだろ?」
「銃刀法違反と不法侵入で訴えられても良いのかよ……?」
「好きにしろ。もし、俺が訴えられたそんときは、てめえの恥ずかしい写真をあちこちでばら撒いてやる」
「―――ンの、くそったれ!!」
「ほら、どうしたよ、孝明。早く謝っちまえば良い話だろう?」
「だれが……っ」
「あんまり意地張ってっと、辛くなるのはおまえだぜ……?」
「っ、くっそ……ッ!!! おぼえてよろ、繁隆ァ!!!」
「―――葛西、てめえ……よくもやってくれたな」
「へっ? し、繁隆、おまえなんでこんなとこに居んだよ?!」
「そりゃあ探したからに決まってんだろ、ああ? 俺たちが他人のヤサ見つける専門家だってこと、てめえ忘れてたんじゃねえのか?」
「忘れてねえけど……って、ああ!! おまっ、鍵はどうしたんだよ!? まさか壊したんじゃんじゃねえだろうな!!」
「誰がそんな荒っぽいことするかよ。綺麗に開けてやったんだ、感謝しろよ」
「誰がするか、阿呆!! ってか、靴!! 土足であがんな馬鹿野郎!!」
「んな汚ぇ場所で靴が脱げるか」
「汚……っ仕方ねえだろ! 転勤が多くていちいち高いマンション買ってらんねえんだよ!!」
「それはおまえの事情だろうが。俺が知ったことかよ」
「繁隆ァ、てめえ……!!」
「それより俺の用件だ。てめえ、よくもnizeで俺の名前を出してくれたな……」
「あ、あれは……」
「ドラッグパーティーは愉しかったか? ああ? どうなんだよ、葛西。ラリったガキどもと飲んで、踊って、存分に愉しんできたんだろうなぁ?」
「わっ悪かったとは思ってるって! ただ、あんときはああでもしないと逃げれなかったから……っ」
「ほお? てめえは難を逃れて、俺は会長直々のお呼び出しを喰らったってのに、謝りもしねえのか」
「で、でも無実だってすぐわかっただろ? それに、ちゃんと詫びの印に情報もやったじゃねえかよ!!」
「俺たちの家業は面子が大事なんだっつうことは知ってるよなあ、おまえ」
「あ、ああ……」
「その面子に泥塗られた俺の気持ち、ちゃんとわかってんのかよ、ああ?」
「っから、悪かったって……!」
「聞こえねえな。ちゃんと、しっかり、頭床に擦り付けて謝れよ―――孝明、」
「なっ」
「おまえが良い子で謝りゃ、俺も許してやらねえことはねえぜ? 今回は、少しばかり厄介な仕事を回される程度で済んだからな。俺の気が収まりゃ、それで良いんだよ」
「だ、っからって……!」
「早くあやまれよ、孝明。そうじゃねえと、今すぐ裸にひん剥いて後ろから突っ込むぞ」
「……っ」
「都合の良いことに、手下は連れてきてるしな。いくらてめえが武道の有段者だっつっても、チャカ持った相手を何人も相手にするのは辛ぇだろ?」
「銃刀法違反と不法侵入で訴えられても良いのかよ……?」
「好きにしろ。もし、俺が訴えられたそんときは、てめえの恥ずかしい写真をあちこちでばら撒いてやる」
「―――ンの、くそったれ!!」
「ほら、どうしたよ、孝明。早く謝っちまえば良い話だろう?」
「だれが……っ」
「あんまり意地張ってっと、辛くなるのはおまえだぜ……?」
「っ、くっそ……ッ!!! おぼえてよろ、繁隆ァ!!!」
「へ、じゃあ鷲崎(わしざき)さんと鷺尾(さぎお)さんって同級なわけ?」
「はい。腐れ縁と言えば良いのか、小中高とずっと同じ学校でしたよ」
「はー……それにしては年の差を感じるんだけど」
「それは、まあ。精神年齢の違いというやつではありませんか?」
「ああ、そうかも」
「―――おい」
「なにか?」
「適当言ってんじゃねえぞ、和弘。てめえだって昔はハジけてやがったくせに」
「えっ、鷺尾さんそれマジ?」
「ああ。表立っては大人しくしてやがったけどな。裏じゃ地元の組と付き合って色々悪さしてたみてえだぜ?」
「うっわー……」
「失礼ですね。情報を売っていただけで、私自身が悪さをしていたわけではありませんよ」
「は、詭弁だな」
「いえ。こういうのは正論と言うんです」
「だとよ、葛西」
「は、はは……鷲崎さんが情報屋って……似合いすぎてて笑えねえー……。もしかして今もやってたりします?」
「さあ、どうでしょう」
「………」
「―――おいコラ、てめえら仕事サボって何くっちゃべってやがる」
「あん?」
「私の仕事は一段落付いていますので」
「俺も、」
「あなたの仕事は山のように残っていますよ」
「……ちっ」
「言い合いするなら他所でやれ。俺はこう見えて忙しいんだ」
「あ、なあ繁隆。んなことより堀田組の情報どうなったんだよ? いい加減、待ってるのも飽きたんだけど」
「てめえの都合を俺に押し付けるな。情報が欲しいなら鷲崎に頼んで仕入れて来い」
「は? やっぱり鷲崎さん、まだ情報屋やってんの?」
「まあ、そうですね。……趣味程度に」
「趣味で人ン家に盗聴器付ける奴が居るかよ……」
「聞こえていますよ、鷺尾」
「へえ、そっか。なら鷲崎さんに頼むのも良いかもって……あ、でも取引材料は? もしかして金ですか?」
「いえ、あまりお金には興味がありませんので」
「……じゃあ、一体なにを条件に……?」
「そうですね。強請りのネタになる程度のお話を聞かせていただければ一番良いんですけれどね……」
「強請り……」
「しかも和弘の知らないネタでって話だろう? 諦めろ葛西、こいつは組長と違って一般論が通じねえから」
「は、はは……」
「まったく、人を意地汚い小悪党のように言うのはやめてくれませんか?」
「事実だろうが」
「本物の悪党よりはマシという話です」
「中途半端な奴に限って馬鹿なことやらかすっていうのは常識だろう?」
「誰が中途半端です、誰が。仕事をサボってばかりのあなたに言われる筋合いは、ないと思いますがね」
「俺は悪党だから仕事をサボってもいいんだよ」
「―――馬鹿じゃないですか?」
「……鷲崎さん、目が怖ぇー……」
「はあ……。こうなったら長いからな。―――葛西、場所移すぞ」
「お、おう……」
「だいたい、あなたは……」
「はい。腐れ縁と言えば良いのか、小中高とずっと同じ学校でしたよ」
「はー……それにしては年の差を感じるんだけど」
「それは、まあ。精神年齢の違いというやつではありませんか?」
「ああ、そうかも」
「―――おい」
「なにか?」
「適当言ってんじゃねえぞ、和弘。てめえだって昔はハジけてやがったくせに」
「えっ、鷺尾さんそれマジ?」
「ああ。表立っては大人しくしてやがったけどな。裏じゃ地元の組と付き合って色々悪さしてたみてえだぜ?」
「うっわー……」
「失礼ですね。情報を売っていただけで、私自身が悪さをしていたわけではありませんよ」
「は、詭弁だな」
「いえ。こういうのは正論と言うんです」
「だとよ、葛西」
「は、はは……鷲崎さんが情報屋って……似合いすぎてて笑えねえー……。もしかして今もやってたりします?」
「さあ、どうでしょう」
「………」
「―――おいコラ、てめえら仕事サボって何くっちゃべってやがる」
「あん?」
「私の仕事は一段落付いていますので」
「俺も、」
「あなたの仕事は山のように残っていますよ」
「……ちっ」
「言い合いするなら他所でやれ。俺はこう見えて忙しいんだ」
「あ、なあ繁隆。んなことより堀田組の情報どうなったんだよ? いい加減、待ってるのも飽きたんだけど」
「てめえの都合を俺に押し付けるな。情報が欲しいなら鷲崎に頼んで仕入れて来い」
「は? やっぱり鷲崎さん、まだ情報屋やってんの?」
「まあ、そうですね。……趣味程度に」
「趣味で人ン家に盗聴器付ける奴が居るかよ……」
「聞こえていますよ、鷺尾」
「へえ、そっか。なら鷲崎さんに頼むのも良いかもって……あ、でも取引材料は? もしかして金ですか?」
「いえ、あまりお金には興味がありませんので」
「……じゃあ、一体なにを条件に……?」
「そうですね。強請りのネタになる程度のお話を聞かせていただければ一番良いんですけれどね……」
「強請り……」
「しかも和弘の知らないネタでって話だろう? 諦めろ葛西、こいつは組長と違って一般論が通じねえから」
「は、はは……」
「まったく、人を意地汚い小悪党のように言うのはやめてくれませんか?」
「事実だろうが」
「本物の悪党よりはマシという話です」
「中途半端な奴に限って馬鹿なことやらかすっていうのは常識だろう?」
「誰が中途半端です、誰が。仕事をサボってばかりのあなたに言われる筋合いは、ないと思いますがね」
「俺は悪党だから仕事をサボってもいいんだよ」
「―――馬鹿じゃないですか?」
「……鷲崎さん、目が怖ぇー……」
「はあ……。こうなったら長いからな。―――葛西、場所移すぞ」
「お、おう……」
「だいたい、あなたは……」