------------------------------------------------------------------
@ 月光シリーズ(わからない人にはわからないネタ)
------------------------------------------------------------------
小「政宗さまっ、深酒もいい加減になさいませ!」
政「うるせえぞ、小十郎。まだそんなに呑んじゃいねえよ」
佐「そうそう。まだ目が危ういくらいだもんねえ?」
小「ンのクソ狐っ、もう呑ますなっつってんだろ!」
佐「良いじゃないの、別に。酔ったって死ぬわけじゃなし。どうせしばらくしたらケロッとしてるでしょうよ」
政「そうだ、言ってやれクソ狐! 小十郎は気が利くかわりに、うるさくて仕方ねえぜ」
佐「ねー」
小「政宗さま、ですからそれ以上は……!」
政「平気だっつの……つと、……ああ?」
佐「ありゃりゃ。酒で平衡感覚が狂っちゃったかな?」
政「すげえぜ、小十郎…! 月が三つも浮かんでやがる!!」
小「……政宗さま、」
佐「あはは! もしホントだったら小十郎さん大変だー」
政「こんなに月があんなら、満月じゃなくても変身しちまうんじゃねえか、小十郎? 変身するなら尻尾触らせろよ」
佐「あ、俺も俺もー。モフモフしててキモチイイんだよねー」
政「てめえは触んじゃねえよクソ狐! あれは俺ンだ」
佐「えー、政宗ったら横暴ー」
政「だまれクソ狐―――、」
小「―――いい加減にしろ、この馬鹿猫……ッ!!」
政「…………」
佐「…………」
小「あ、いえ、これは……その……」
政「小十郎、おまえ――」
佐「……白猫ちゃん?」
------------------------------------------------------------------
@ Logical
------------------------------------------------------------------
小「おめえら、さっさと店開く準備終わらせろ!」
元「はいはい、了解。―――ったく、うちのオーナーはうるさくていけねえぜ」
佐「だよねぇ。どうせテキトー運行なんだから、遅れたってだぁれも文句言わないでしょうに」
小「そこの馬鹿二人ッ! ダラダラくっちゃべってねえで、手ェ動かせ! 無駄口叩くようなら、ブツ切りにして今日のスープのダシにしてやるからな!」
元「……おい、言われてるぜ佐助」
佐「いやいや。あれは元親さんに言ったんでしょ」
政「―――てめえら二人に決まってんだろ」
佐「あらら、おはよー伊達さん」
元「おめえも、良くあんな奴と四六時中一緒に居て腐らねえよなぁ……」
政「ああ? 誰のこと言ってやがる」
佐「あの人、あの人」
政「?……って、小十郎じゃねえか」
元「説教ばっかでうるさくて仕方ねえ。いまどき小姑でもいくらかマシだぜ」
政「……そうか?」
佐「まあ、あの人伊達さんにはベタ甘だけどねぇ……っとと、こっち見た」
小「おめえら、本気で死にたい―――あ、政宗さまお目覚めですか」
政「ああ」
小「でしたら、すぐ朝食をご用意します。しばしお待ちいただけますか?」
政「店の準備で忙しいんだろ? 俺よりもそっち優先しろよ」
小「なりません。店よりもあなたのお体の方が大事です」
政「相変らず大仰な奴だぜ……」
元「……贔屓ってこういうこと言うんだな」
佐「……ですねー」
------------------------------------------------------------------
@ 花籠シリーズ
------------------------------------------------------------------
小「政宗さま、もう張り見世の刻限を過ぎておりますぞ」
政「I know! ちょっと待て!」
小「他のものは既に席に着いているというのに、御職のあなたが座に出ないとはどういうことです」
政「そう急かすなって。今日は藤が居ねえから、髪がうまく結い上げれねえんだよ」
小「……藤が、ですか?」
政「そうだ。もう出る。だから、おまえは先に――」
小「政宗さま、なぜ藤が居ないのです」
政「Ah? ……あ、いや」
小「藤はあなたの禿のはず。その藤が、なぜ今そこに居ないのですか」
政「あーっと……、そのだな」
小「―――失礼を、」
政「っ、小十郎……!」
小「……やはり、」
佐「あらら、バレちゃったか」
小「……ンのクソ猿、また政宗さまにちょっかい掛けていやがんのか」
佐「もう病気だからねえ……。俺様ってば瑠璃さんに飢えて枯れかけてんの」
小「死んでも治らねえ病というなら、喜んで黄泉の国に送ってやるが?」
佐「やー、そりゃ勘弁。俺も、まだ命は惜しいし」
小「なら政宗さまに手ぇ出すんじゃねえよクソったれが」
佐「だから言ってんでしょ? もう病気だから治らないーって」
小「―――てんめえ……ッ!」
政「うっせえんだよ、テメエら! いつまで経っても支度できねえだろうが!!!」
------------------------------------------------------------------
@ 奥極シリーズ
------------------------------------------------------------------
政「シゲ、ついに明日だぜ」
成「待ちに待った……だな」
政「……わかってんな?」
成「任せろよ」
政「しくじりは許されねえ。失敗すりゃあ、俺らの命も危うくなる大勝負だ」
成「ああ、なんたって……」
―――明日は、小十郎と憎き(にっくき)猿飛の結納の儀式だからな。
政「俺ァ、綱元とも長い付き合いだが、あいつがあんなこと計画するハジけた野郎だとは知らなかったぜ……」
成「あいつは小十郎が絡むと性格変わっからなぁ……。今時、討ち入りでもあんなエグいことはしねえよ」
政「金もかけてやがるしな。……あいつ、普段はうるせえくらいに節約節約って言ってるくせによ」
成「小十郎のためなら、億が飛んでもケロっとしてそうだよな」
政「いつもは俺が出入りしようとしたら文句言うくせによ……」
成「小十郎のためなら捕まったって惜しくねえんだよ、きっと」
政「……」
成「……」
政「俺、あんな兄貴なら要らねえわ……」
成「苦労しそうだよな、色んな意味で……」
@ 月光シリーズ(わからない人にはわからないネタ)
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小「政宗さまっ、深酒もいい加減になさいませ!」
政「うるせえぞ、小十郎。まだそんなに呑んじゃいねえよ」
佐「そうそう。まだ目が危ういくらいだもんねえ?」
小「ンのクソ狐っ、もう呑ますなっつってんだろ!」
佐「良いじゃないの、別に。酔ったって死ぬわけじゃなし。どうせしばらくしたらケロッとしてるでしょうよ」
政「そうだ、言ってやれクソ狐! 小十郎は気が利くかわりに、うるさくて仕方ねえぜ」
佐「ねー」
小「政宗さま、ですからそれ以上は……!」
政「平気だっつの……つと、……ああ?」
佐「ありゃりゃ。酒で平衡感覚が狂っちゃったかな?」
政「すげえぜ、小十郎…! 月が三つも浮かんでやがる!!」
小「……政宗さま、」
佐「あはは! もしホントだったら小十郎さん大変だー」
政「こんなに月があんなら、満月じゃなくても変身しちまうんじゃねえか、小十郎? 変身するなら尻尾触らせろよ」
佐「あ、俺も俺もー。モフモフしててキモチイイんだよねー」
政「てめえは触んじゃねえよクソ狐! あれは俺ンだ」
佐「えー、政宗ったら横暴ー」
政「だまれクソ狐―――、」
小「―――いい加減にしろ、この馬鹿猫……ッ!!」
政「…………」
佐「…………」
小「あ、いえ、これは……その……」
政「小十郎、おまえ――」
佐「……白猫ちゃん?」
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@ Logical
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小「おめえら、さっさと店開く準備終わらせろ!」
元「はいはい、了解。―――ったく、うちのオーナーはうるさくていけねえぜ」
佐「だよねぇ。どうせテキトー運行なんだから、遅れたってだぁれも文句言わないでしょうに」
小「そこの馬鹿二人ッ! ダラダラくっちゃべってねえで、手ェ動かせ! 無駄口叩くようなら、ブツ切りにして今日のスープのダシにしてやるからな!」
元「……おい、言われてるぜ佐助」
佐「いやいや。あれは元親さんに言ったんでしょ」
政「―――てめえら二人に決まってんだろ」
佐「あらら、おはよー伊達さん」
元「おめえも、良くあんな奴と四六時中一緒に居て腐らねえよなぁ……」
政「ああ? 誰のこと言ってやがる」
佐「あの人、あの人」
政「?……って、小十郎じゃねえか」
元「説教ばっかでうるさくて仕方ねえ。いまどき小姑でもいくらかマシだぜ」
政「……そうか?」
佐「まあ、あの人伊達さんにはベタ甘だけどねぇ……っとと、こっち見た」
小「おめえら、本気で死にたい―――あ、政宗さまお目覚めですか」
政「ああ」
小「でしたら、すぐ朝食をご用意します。しばしお待ちいただけますか?」
政「店の準備で忙しいんだろ? 俺よりもそっち優先しろよ」
小「なりません。店よりもあなたのお体の方が大事です」
政「相変らず大仰な奴だぜ……」
元「……贔屓ってこういうこと言うんだな」
佐「……ですねー」
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@ 花籠シリーズ
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小「政宗さま、もう張り見世の刻限を過ぎておりますぞ」
政「I know! ちょっと待て!」
小「他のものは既に席に着いているというのに、御職のあなたが座に出ないとはどういうことです」
政「そう急かすなって。今日は藤が居ねえから、髪がうまく結い上げれねえんだよ」
小「……藤が、ですか?」
政「そうだ。もう出る。だから、おまえは先に――」
小「政宗さま、なぜ藤が居ないのです」
政「Ah? ……あ、いや」
小「藤はあなたの禿のはず。その藤が、なぜ今そこに居ないのですか」
政「あーっと……、そのだな」
小「―――失礼を、」
政「っ、小十郎……!」
小「……やはり、」
佐「あらら、バレちゃったか」
小「……ンのクソ猿、また政宗さまにちょっかい掛けていやがんのか」
佐「もう病気だからねえ……。俺様ってば瑠璃さんに飢えて枯れかけてんの」
小「死んでも治らねえ病というなら、喜んで黄泉の国に送ってやるが?」
佐「やー、そりゃ勘弁。俺も、まだ命は惜しいし」
小「なら政宗さまに手ぇ出すんじゃねえよクソったれが」
佐「だから言ってんでしょ? もう病気だから治らないーって」
小「―――てんめえ……ッ!」
政「うっせえんだよ、テメエら! いつまで経っても支度できねえだろうが!!!」
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@ 奥極シリーズ
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政「シゲ、ついに明日だぜ」
成「待ちに待った……だな」
政「……わかってんな?」
成「任せろよ」
政「しくじりは許されねえ。失敗すりゃあ、俺らの命も危うくなる大勝負だ」
成「ああ、なんたって……」
―――明日は、小十郎と憎き(にっくき)猿飛の結納の儀式だからな。
政「俺ァ、綱元とも長い付き合いだが、あいつがあんなこと計画するハジけた野郎だとは知らなかったぜ……」
成「あいつは小十郎が絡むと性格変わっからなぁ……。今時、討ち入りでもあんなエグいことはしねえよ」
政「金もかけてやがるしな。……あいつ、普段はうるせえくらいに節約節約って言ってるくせによ」
成「小十郎のためなら、億が飛んでもケロっとしてそうだよな」
政「いつもは俺が出入りしようとしたら文句言うくせによ……」
成「小十郎のためなら捕まったって惜しくねえんだよ、きっと」
政「……」
成「……」
政「俺、あんな兄貴なら要らねえわ……」
成「苦労しそうだよな、色んな意味で……」
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【ペルソナ3】
向井光也(むかい こうや)
無口(口下手?)・無関心・無気力気味。
小さい頃に親戚でたらい回しにされたせいで、「他人」というものを信じられない性分。
しかし、一度懐に入れた(信頼した)人間に対してだけは心を開くので、付き合いは狭く深くという状態になっている。
【ペルソナ4】
神津暁光(こうづ あきみつ)
普段は至ってクールだが、変なところではっちゃける不思議ちゃん。
自分の関心がないものに関しては酷く冷淡(というよりスルー傾向)。
両親にほったらかされていたせいで家事マスター。世話焼き。
向井光也(むかい こうや)
無口(口下手?)・無関心・無気力気味。
小さい頃に親戚でたらい回しにされたせいで、「他人」というものを信じられない性分。
しかし、一度懐に入れた(信頼した)人間に対してだけは心を開くので、付き合いは狭く深くという状態になっている。
【ペルソナ4】
神津暁光(こうづ あきみつ)
普段は至ってクールだが、変なところではっちゃける不思議ちゃん。
自分の関心がないものに関しては酷く冷淡(というよりスルー傾向)。
両親にほったらかされていたせいで家事マスター。世話焼き。
(獣鈴-至高の得物の習作)
「っぐ・・・!!」
無防備な腹に重い一撃が食い込む。
汚れ一つ無い黒光した凶器の先に居る男は、壁際で蹲る俺を見て尊大に笑った。
「もう終いか? ええ?」
「・・・っけ、さつに駆け込まれても・・・良いのかよ?」
「警察? 駆け込む元気がてめえにあんのか?」
喉奥から競りあがってきそうな吐き気を無理矢理に押さえ込み、射殺すように睨み付けても、相手は愉しげに笑うだけ。
理不尽な暴力は三十分程前から繰り返され、決定打を与えられないまま、じわじわと絞め殺すような痛みばかり与えられている。
きっちりと体のラインに沿った三つ揃えのスーツは、男の野性味を巧く隠してはいるが、俺を見下ろす瞳の奥の残虐さまでは隠してはくれない。悪あがきする馬鹿な男だと罵りながらも一向に消えない、その口元の笑みは一体何を意味するのか。
考えるには、少しこの状況は辛すぎた。
「足があるなら、可能なんじゃねえの?」
「ほう? なら、まず足から潰してやろうか」
「いっ、・・・ッ」
無防備に投げ出されていた足にかかる負荷。その痛みに顔を顰めた瞬間に、横合いから強く蹴り飛ばされる。
体力を消耗している体は、簡単に横へと吹っ飛び、倒れこんだ粗末なコンクリートの床で顔には新たな擦り傷が出来た。
視界を上げる事すら億劫な状態で、俺の眼はすぐそばの壁際に落とされている自分の上着を捉えた。
(これなら・・・)
ゴクリ、と期待に喉が鳴る。―――しかし、気付かれるわけにはいかない。
いまだに鼠を手のひらの中で遊ばせている猫のように、俺をいたぶる男を意識して、体を起き上げようとしながら俺は上着の近くへと寄った。
壁に背を向けているせいで、男の視界には俺の背後は映らない。怪しまれない程度に体の重心を後ろに掛けるふりをして、指先を慣れ親しんだ布地へと這わせた。
「まだ起き上がるか」
「あんたに病院代払ってもらえるまで、倒れるわけにはいかないんでね」
床に腰を下ろしている俺と、威圧感のある長身を誇る男とでは、視界の高さが違いすぎる。男がそれに気付いたのかは分からないが、壁にもたれ掛かりながら息を整えている俺を見つめたまま男は膝を折り、荒事に慣れた指先で俺の顎を捕らえた。
無理矢理合わせられる視線。
凍てつくような警戒と、燃えるような嗜虐。交じり合わないそれが二人の間で迸り、男の笑みは更に深いものへと変わった。
間近で見る男の顔は、滅多にお目にかかれないほど野性味と男の色香に溢れている。その上、纏う空気も上質とあれば、女は引っ切り無しに寄ってくるだろう。そんな馬鹿なことを考えながらも、俺の指先は男が注意を逸らした背後を這い、目的のものを懸命に探し出そうと動く。
ボタン・・・、襟・・・、胸の隠し・・・。
いつもは左脇に専用の器具で固定しているものを、今日はたまたま上着の胸ポケットへと潜ませていた。
しかし、今日はこの暑さだ。邪魔な上着は、早々に腕へと引っ掛けられ、辿り付いたこの地では真っ先にこの手から離れていった―――けれど、そのおかげで中身を確かめられることもなく、再びこうして俺の手の中へと戻ってきてくれた。
僥倖だ。
口の端に獰猛な笑みを刻みながら俺を観察する男に、これで仕返しをする事が出来る。
やらるばかりというのは性に合わない。やるなら、同じ分だけ・・・いや、倍にして返してやらなければ、この胸のむかつきは治まらないだろう。
「生意気な口利きやがる。・・・そんなに死にたいのか、てめえ?」
「・・・どう思うよ?」
「死に急いでるようにゃあ見えねえが、お利口さんでもないみてえだな」
愉しげに、男は喉奥で笑いを噛み殺す。
そんな笑みを間近にみながらも、俺が感じるのは恐怖ではなく、この先に待っているであろう愉悦だけだ。
(―――あった・・・)
指先に触れる冷たい相棒。いつもはコレに触れたいとすら思わないのに、久しぶりに味わった感触に思わず笑みが零れそうになった。
死神と呼ばれた相棒を手繰り寄せ、しっかりと手のひらの中に閉じ込める。
あと、少し。
男が完全に俺以外から興味を消したとき、この指先を振り上げる事ができる。
はやく、はやく、はやく。
暴走しそうになる拍動を無理矢理押さえ込み、取り繕ったものではない笑みを浮かべてみせた。
「馬鹿なガキにはお仕置き・・・ってやつ?」
「されてえのかよ、おまえ?」
「痛いのは嫌いなんだけど、優しーく叱ってくれるならいいぜ?」
にやり、と音がしそうな笑みを見せてやれば、男は一瞬目を瞠ったあと、爆笑する。
普段は崩れないであろう男の仮面が剥がれたのは興味深いが、今はそれよりも手にしたチャンスを逃さないことのほうが重要だ。
鍛えられた俊敏性を生かして、まだ肩を揺らしている男のおとがいに相棒を突きつける。
一瞬でそれが何か理解したのだろう。動きを止めた男の瞳には、先程の愉悦が消え去り、純粋な殺気が浮かび上がった。
俺を甘く見て腕を縛らなかったのが悪いんだ。
最新の注意を払って、俺の持ち物を調べなかったおまえが馬鹿なんだ。
したり、と笑う俺を見て、男は今にも喉笛に噛み付きそうな獣の笑みを浮かべて笑う。
「―――これは、お仕置きか?」
「そ。言葉で言っても分からないケダモノには、力で物事を教えないと・・・だろ?」
「俺も痛いのは嫌いなんだがなぁ」
「俺はあんたみたいに優しくないから、いちいち相手のリクエストなんざ聞かねえの。・・・おら、頭の後ろで指組みな」
男に相棒―――黒光りする拳銃を突きつけたまま、同じ速度で立ち上がる。
ゆっくりとだが確かに男の指が後頭部に回るのを見て、俺は空いた手でスラックスのポケットに突っ込まれていた携帯へと手を伸ばし、暗記していた番号へと掛ける。
ツーコールで繋がったあたり、相手も俺からの報告を待ちわびていたのだろう。
電話先から聞こえる「どうだった?!」という急いだ(せいだ)声を聞き、今日の晩飯は俺の好物で決まりだな、とほくそ笑む。
「ターゲット、捕まえました」
獰猛な獣は、追い込まれてなお、瞳から光を消してはゆかない。いっそ愉しげとすら思える空気を身に纏い、新たな獲物が現れたことへの愉悦を噛み締めているのだろう。
けれど。俺は、おまえに喰われるわけにはいかないんだ。
―――だから俺がおまえを飼い慣らす。
獰猛な獣の首に鈴を付けられるなんて思っていない。腹の底では何かを思っていても、俺に従える獣になれば、それで良い。
従順な犬にはご褒美。言う事を聴かないケダモノにはお仕置き。それがこの世の鉄則だろう?
東郷繁隆(とうごう しげたか)。
関東最大勢力である龍志会の二次団体、兵頭組を治める獣。
ようやく手に入った獲物が自分の足元で唸る様を見て、葛西孝明(かさい たかあき)は殺しても殺しても浮んでくる笑みを唇に刷いた。
「っぐ・・・!!」
無防備な腹に重い一撃が食い込む。
汚れ一つ無い黒光した凶器の先に居る男は、壁際で蹲る俺を見て尊大に笑った。
「もう終いか? ええ?」
「・・・っけ、さつに駆け込まれても・・・良いのかよ?」
「警察? 駆け込む元気がてめえにあんのか?」
喉奥から競りあがってきそうな吐き気を無理矢理に押さえ込み、射殺すように睨み付けても、相手は愉しげに笑うだけ。
理不尽な暴力は三十分程前から繰り返され、決定打を与えられないまま、じわじわと絞め殺すような痛みばかり与えられている。
きっちりと体のラインに沿った三つ揃えのスーツは、男の野性味を巧く隠してはいるが、俺を見下ろす瞳の奥の残虐さまでは隠してはくれない。悪あがきする馬鹿な男だと罵りながらも一向に消えない、その口元の笑みは一体何を意味するのか。
考えるには、少しこの状況は辛すぎた。
「足があるなら、可能なんじゃねえの?」
「ほう? なら、まず足から潰してやろうか」
「いっ、・・・ッ」
無防備に投げ出されていた足にかかる負荷。その痛みに顔を顰めた瞬間に、横合いから強く蹴り飛ばされる。
体力を消耗している体は、簡単に横へと吹っ飛び、倒れこんだ粗末なコンクリートの床で顔には新たな擦り傷が出来た。
視界を上げる事すら億劫な状態で、俺の眼はすぐそばの壁際に落とされている自分の上着を捉えた。
(これなら・・・)
ゴクリ、と期待に喉が鳴る。―――しかし、気付かれるわけにはいかない。
いまだに鼠を手のひらの中で遊ばせている猫のように、俺をいたぶる男を意識して、体を起き上げようとしながら俺は上着の近くへと寄った。
壁に背を向けているせいで、男の視界には俺の背後は映らない。怪しまれない程度に体の重心を後ろに掛けるふりをして、指先を慣れ親しんだ布地へと這わせた。
「まだ起き上がるか」
「あんたに病院代払ってもらえるまで、倒れるわけにはいかないんでね」
床に腰を下ろしている俺と、威圧感のある長身を誇る男とでは、視界の高さが違いすぎる。男がそれに気付いたのかは分からないが、壁にもたれ掛かりながら息を整えている俺を見つめたまま男は膝を折り、荒事に慣れた指先で俺の顎を捕らえた。
無理矢理合わせられる視線。
凍てつくような警戒と、燃えるような嗜虐。交じり合わないそれが二人の間で迸り、男の笑みは更に深いものへと変わった。
間近で見る男の顔は、滅多にお目にかかれないほど野性味と男の色香に溢れている。その上、纏う空気も上質とあれば、女は引っ切り無しに寄ってくるだろう。そんな馬鹿なことを考えながらも、俺の指先は男が注意を逸らした背後を這い、目的のものを懸命に探し出そうと動く。
ボタン・・・、襟・・・、胸の隠し・・・。
いつもは左脇に専用の器具で固定しているものを、今日はたまたま上着の胸ポケットへと潜ませていた。
しかし、今日はこの暑さだ。邪魔な上着は、早々に腕へと引っ掛けられ、辿り付いたこの地では真っ先にこの手から離れていった―――けれど、そのおかげで中身を確かめられることもなく、再びこうして俺の手の中へと戻ってきてくれた。
僥倖だ。
口の端に獰猛な笑みを刻みながら俺を観察する男に、これで仕返しをする事が出来る。
やらるばかりというのは性に合わない。やるなら、同じ分だけ・・・いや、倍にして返してやらなければ、この胸のむかつきは治まらないだろう。
「生意気な口利きやがる。・・・そんなに死にたいのか、てめえ?」
「・・・どう思うよ?」
「死に急いでるようにゃあ見えねえが、お利口さんでもないみてえだな」
愉しげに、男は喉奥で笑いを噛み殺す。
そんな笑みを間近にみながらも、俺が感じるのは恐怖ではなく、この先に待っているであろう愉悦だけだ。
(―――あった・・・)
指先に触れる冷たい相棒。いつもはコレに触れたいとすら思わないのに、久しぶりに味わった感触に思わず笑みが零れそうになった。
死神と呼ばれた相棒を手繰り寄せ、しっかりと手のひらの中に閉じ込める。
あと、少し。
男が完全に俺以外から興味を消したとき、この指先を振り上げる事ができる。
はやく、はやく、はやく。
暴走しそうになる拍動を無理矢理押さえ込み、取り繕ったものではない笑みを浮かべてみせた。
「馬鹿なガキにはお仕置き・・・ってやつ?」
「されてえのかよ、おまえ?」
「痛いのは嫌いなんだけど、優しーく叱ってくれるならいいぜ?」
にやり、と音がしそうな笑みを見せてやれば、男は一瞬目を瞠ったあと、爆笑する。
普段は崩れないであろう男の仮面が剥がれたのは興味深いが、今はそれよりも手にしたチャンスを逃さないことのほうが重要だ。
鍛えられた俊敏性を生かして、まだ肩を揺らしている男のおとがいに相棒を突きつける。
一瞬でそれが何か理解したのだろう。動きを止めた男の瞳には、先程の愉悦が消え去り、純粋な殺気が浮かび上がった。
俺を甘く見て腕を縛らなかったのが悪いんだ。
最新の注意を払って、俺の持ち物を調べなかったおまえが馬鹿なんだ。
したり、と笑う俺を見て、男は今にも喉笛に噛み付きそうな獣の笑みを浮かべて笑う。
「―――これは、お仕置きか?」
「そ。言葉で言っても分からないケダモノには、力で物事を教えないと・・・だろ?」
「俺も痛いのは嫌いなんだがなぁ」
「俺はあんたみたいに優しくないから、いちいち相手のリクエストなんざ聞かねえの。・・・おら、頭の後ろで指組みな」
男に相棒―――黒光りする拳銃を突きつけたまま、同じ速度で立ち上がる。
ゆっくりとだが確かに男の指が後頭部に回るのを見て、俺は空いた手でスラックスのポケットに突っ込まれていた携帯へと手を伸ばし、暗記していた番号へと掛ける。
ツーコールで繋がったあたり、相手も俺からの報告を待ちわびていたのだろう。
電話先から聞こえる「どうだった?!」という急いだ(せいだ)声を聞き、今日の晩飯は俺の好物で決まりだな、とほくそ笑む。
「ターゲット、捕まえました」
獰猛な獣は、追い込まれてなお、瞳から光を消してはゆかない。いっそ愉しげとすら思える空気を身に纏い、新たな獲物が現れたことへの愉悦を噛み締めているのだろう。
けれど。俺は、おまえに喰われるわけにはいかないんだ。
―――だから俺がおまえを飼い慣らす。
獰猛な獣の首に鈴を付けられるなんて思っていない。腹の底では何かを思っていても、俺に従える獣になれば、それで良い。
従順な犬にはご褒美。言う事を聴かないケダモノにはお仕置き。それがこの世の鉄則だろう?
東郷繁隆(とうごう しげたか)。
関東最大勢力である龍志会の二次団体、兵頭組を治める獣。
ようやく手に入った獲物が自分の足元で唸る様を見て、葛西孝明(かさい たかあき)は殺しても殺しても浮んでくる笑みを唇に刷いた。